世界最大の太陽光大国 中国の今【前編】

中国では、自然エネルギーの導入量が急増しており、とくに太陽光発電の伸びが著しい。
2017年の太陽光発電の導入量は、世界全体が95GWだったのに対し、中国1国だけで52GWを超えた。中国は今、世界市場の実に50%以上を占める太陽光大国へと変貌を遂げたのだ。

なぜ、中国で太陽光発電が普及したのか。まず中国政府が自然エネルギーの普及を強力に推進している点を挙げるべきだろう。

中国の都市部では、大気汚染物質、PM2.5による健康被害が深刻だ。中国政府は、古い火力発電所を強制的に閉鎖してでも、クリーンなエネルギーによる供給体制への転換を進めている。2016年に発足した地球温暖化対策の枠組み『パリ協定』でも、その姿勢が鮮明に現れており、中国政府は、温室効果ガスの排出削減を積極的に進める方針だ。

2016年に中国政府は、2020年までの5年間にわたって太陽光発電の普及促進に1兆人民元(17兆円)を拠出すると発表。さらに太陽光発電の累計導入量を110GWまで増やす目標を掲げ、これを3年前倒しで達成した。

太陽光発電の普及促進を目的に、中国政府は、日本と同様に太陽光発電設備で発電した電力を電力会社に売電できるFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)を導入した。ただ、2017年の導入拡大に寄与したのは、『分散型太陽光発電プロジェクト』だった。これは、住宅や商業施設の屋根などに設置する太陽光発電設備の導入を促す制度で、特徴は、自家消費量に応じて補助金を給付する仕組みである。

中国エネルギー研究会の李俊峰主任委員は、「中国では太陽光発電の電気を自家消費して余った電気は売電することができる。政府は太陽光発電の自家消費を推進しており、全量売電するより経済性も高い。他産業に比べて太陽光発電は補助金を得やすいうえ、太陽光発電の設置コストが下がったことで経済メリットが出てきている」と説明する。

補助金の仕組みは、まず太陽光発電設備を購入して太陽光電力を1kWh自家消費すると、設備の所有者は0.42人民元(7.1円)の補助金を受け取れる。一方、中国の電気料金単価は、kWhあたり0.7人民元(11.9円)だ。したがって、太陽光発電設備を導入して、自家消費すれば、電気代の削減額と補助金を合わせて1.12人民元(19円)の価値が生まれる。

このように、中国では都市部でも太陽光発電設備の自家消費利用が進み、2017年は急激に導入量が伸びた。

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